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山小屋アルバイト虎の巻

「山小屋アルバイトのハウツー」をまとめてみました。山小屋選び&生活の参考にしてください。

第12回 大きな小屋と小さな小屋

この写真は2010年の高天原山荘の写真。しかも、お客さんは見る機会のない裏側のファザード。裏にあるのは、いわゆる「こえだめ」と焼却炉。いわば山小屋での汚れ仕事の場なので、お客さんは入れないようになっています。一転、正面側はデッキになっていて、お客さんの憩いの場。今回は、この高天原での生活をちょっと振り返ってみようかと思います。

もともとこの小屋は大東鉱山という会社のタングステンの採掘&精製のための作業小屋だったのですが、50年も前にこんな山奥でタングステンを掘っていたなんってちょっと驚きです。こんな山奥にタングステンがあるなんて、誰が見つけたのやら。もともと太郎平も、金の採掘調査のために開かれたらしいし(結局、金はみつからなかったらしいですが)ので、そういう山師っていわれるような人たちが、北アルプスを歩きまわっていたのかもしれません。どんな人達だったのでしょうかね、非常に興味あります。その頃の黒部源流域にどんな人間が出入りしていたのかは、三俣山荘のオーナーである、伊藤正一さんの、「黒部の山賊」という名著に詳しく書かれています。以前は、三俣グループの小屋でしか手に入らなかったのですが、数年前に山と渓谷社から、出版され、アマゾンでも手に入るようになったので、ぜひ読んでみてください。

高天原山荘は、厨房と従業員部屋の部分は増築してありますが、ほぼ50年前当時のままで、軽量鉄骨造の建物で、昔の姿のまま、立ち続けています。梁なんかはトラス構造になっているのですが、こういった部材を、まだヘリの無い時代に、大東新道を担いで運んだのでしょうか、トラスは現場で溶接したのですかね。どちらにしろ、大変なことです。50年間ほったらかしで、しかも、豪雪地帯にあるので、基礎も柱も歪み放題、おまけにここら辺は湿地帯で地盤がよくないですからね。その影響で、屋根が波打っているのが写真でもわかると思います。でも、この歪みっぷりが、逆に味となっているのです。お客さんも、「おお・・これは凄い・・噂通りだw・・」と満足して写真を撮って帰っていきます(笑)。改修であまり小奇麗になってしまうのも、逆にちょっと残念な気もします(笑)。

#追伸

*高天ヶ原山荘は2013年までに母屋の改修、厨房/従業員部屋の新築、バイオトイレの新設を終えて、新しく蘇りました。バックヤードにも大きなウッドデッキをつくって、お客さんも洗濯物を乾かしたりできるようになっています。厨房も広く綺麗になり、働く者にとっても、とても快適な小屋になりました。 >

大きな小屋、小さな小屋

高天ヶ原は、北アルプスの最深部とか、秘湯中の秘湯とか、登山口から最も遠い小屋なんて言われかたをしますけど、けっして、地理的にどん詰まりのような場所に位置しているわけではなく、意外と、交通の要だったりします。高天ヶ原を中心に、三俣山荘の岩苔乗越への道、薬師沢小屋へは、大東新道と雲の平経由の二本の道があるし、読売新道へと駆け上がる、温泉沢の登山道、今は廃道になってしまいましたが、奥黒部ヒュッテまで通っていた、旧高天原新道(今は竜晶池から先はわずかに痕跡があるだけ)もあり。小屋開け後は、これらの登山道整備に追われる日々となります。温泉の整備、脱衣場の組み立てや、岩苔小谷の橋架けもあり、これを小屋番さんと二人でこなさないといけないので、最初の2週間程は大忙しです。2010年は6月末に小屋に入ったのですが、最初のお客さんが来たのは7月の10日過ぎで、単独行の男性一人でした。それまでは、ずっと、昼間は外仕事、当時の小屋番の小池夫妻と三人で夕食後、九時頃まで毎晩晩酌しながら、いろいろな話を聞かせていただきました。今は小池夫妻も山小屋の仕事は引退されて、太郎平小屋の厨房を仕切っていた高橋さんが小屋番をしております。

その後は、ぽつぽつと、お客さんも増え始めて、一番多かったのは、8月3日で、120人くらいだったかな、外仕事が終わってしまえば、あとはルーチンワーク。起床→朝食準備→清掃→お風呂(もち白濁硫黄系泉質の露天風呂!)→夕食の天ぷら用のあざみ取り→昼飯→売店・受付→夕飯準備→片付け→従業員夕食→翌日の準備→就寝といった繰り返しの毎日です。まあ、バイト同士でローテーションを組んで、山へ行ったりもできますけど、小さな小屋でバイトも少ないので、あまり休暇の融通は利かないかな?大きな小屋だと、チームに分けてローテーションできるので、休憩は比較的取りやすいのだけれど。でも、ここ6年ほど、小さな小屋で働いてみて、自分にはやはりこじんまりした小屋の方が向いてるなーと思います。なんといっても時間がゆっくり流れていますし、お客さんとの垣根が無いので、話もはずみますし、仕事してても楽しいですね。

赤い屋根の小さな小屋、目の前にはお花一杯の大湿原にぽっかり浮かぶ水晶岳。夏の青い空に入道雲。まだ、雪解け水のような、冷たい清流に遊ぶイワナ達。ああ、夢のような日々(笑)

*大きな小屋には、写真家やら、雑誌、テレビ関係者など、山に関係する様々な人達がやってくるので、ありとあらゆる山に関する情報が集まりますので、それはそれで、楽しかったりするのですけどね。