第13回 よくある質問

いくつかインクノットに寄せられた質問もあるようなので、基本的なことをFAQ的にアドバイスして行こうかと思います。

1)お金について:いくら位お金は持って行けばいいの?

基本的には食費込みか、いくらか食費を取られるにしてもバイト代から差し引かれるだけなので、普通に働いている分にはお金はいっさいかかりません。なので用心のため(着いて数日で小屋番と大喧嘩して、バイト代ももらわないうちに即下山とか、少なからず見てきていますので・・・)に帰りの交通費+αくらいあればいいのですが、自分用に、売店で売っているお菓子やお酒なんかを買ったり、他の小屋に遊びに行って、おみやげのバッジや手ぬぐいを買ったりすることもあるので、その分、多少多めに持っていくといいかと思います。自分の小屋の物なんかは、ツケで購入して、後でバイト代から引いてもらえる場合もあるので、現金としては必要ない場合もあります。小屋によってやりかたも違うので事前に確認しておいた方がいいでしょう。

自分にとって生活に必要なもの、お金を使ってしまいそうなもの、そしてそれの山での調達方法(or 自分で担いでいくのか、ヘリであげてもえるのか、小屋で買えるのか)に関してはあらかじめ考えておかないといけないかもしれません。あるグループでは、頼めばヘリの荷揚げの時にお酒やたばこを揚げてくれますが、別のグループでは個人の荷物はヘリでの荷揚げ禁止のところもあります。お酒も、毎晩、晩酌用に売店の飲み物から一本無料で選べる小屋、小屋番さんが、自腹でバイトの分までビールを揚げてくれている小屋等、様々ですが、私のように毎晩飲みたい人は、ヘリでの荷揚げの時に、個人用のお酒も上げてくれるところがいいでしょうね。あ、バイト代はだいたい最終日に、現金払いの場合が多いですが、あとで銀行に振込っていう小屋もあります。そういえば、GWの鳳凰小屋でのバイト代を財布もろとも、帰りの電車で紛失してしまったこともありました。この時は十万弱でしたが、数ヶ月のバイト代となると、結構な額になるので、バイト代の入った封筒は厳重管理してくださいね。

2)休日について:休みをとって、山を歩いたりできるのか?

最盛期だけの短期バイトの人は、なかなか休みはとれないかもしれません。なにせ、みんな忙しくて一杯一杯な感じなのです。中期以上の人は交代でまとめて4-5日くらいは取れると思いますが、8月末か、9月に入ってちょっと暇になってからかな。微妙なのは1ヶ月くらいの人で、私もそうなんですけど、予約の状況を見て「この日はお客さん少ないので半日位、山を歩いてきていいですか?」とか交渉してみるといいですよ。でも、たいていはその小屋なりのやり方があって、朝早くでた人(早番)は午後長く休めるとかその小屋なりにうまくローテーションを組んで運営しているはずです。でも、初めての小屋で一ヶ月くらいだと、慣れるのに一週間、最盛期の二週間のバタバタが終わるともう下山まで一週間ですから、あっという間なんですよね。それより、バイトはバイトと割り切って、帰りにのんびり縦走して帰るとか、紅葉の時期に居候として遊びにくるとかのほうがいいんじゃないかな?はじめての所なら、特に遠出しなくとも、小屋周辺で休み時間にうろうろするだけでも結構面白いものですよ。僕は岩魚釣りに行くか、カメラ持ってぶらぶら散歩するのが好きな休憩時間の過ごし方です。

3)お風呂や洗濯について:あまり不衛生なのはちょっと困るという方

かなり高所にある小屋でも、それなりの小屋なら、従業員用のお風呂かシャワー、そして発電機で発電しているところは洗濯機もあるのが普通です。しかし、だいたいどこも、お風呂はあっても、入れるのは週2回程度。洗濯は発電機がまわっている朝か晩、手の空いた時にささっと済ませる感じです(携帯なんかの充電も発電機がまわっている間にすることになります)。ただし、水を雨水だけに頼っている所はどちらも無いに等しい場合もあります。風呂といっても、お湯を沸かして、タオルで体を拭くだけのところもありますし、洗濯にもあまり十分に水は使えない小屋もあります。ただ、こういう厳しい条件の小屋は眺望が素晴らしかったりもするのですが。ここら辺が気になる人は、最初に小屋に確認しておいたほうがいいでしょう。条件は小屋によってまちまちなので。例えば高天ヶ原山荘はお風呂までは歩いて片道15分程かかります。しかし、硫黄系の白濁した、とてもいい温泉で、露天風呂で毎日お湯につかれます。僕は雨の日でも傘さして入りにいきます。そのかわり発電機がないので洗濯はバケツで手洗いになります。でも、水は湧水が豊富なので、洗濯の水に困るということはありません。そうそう、通常、洗濯用の洗剤や、石鹸、シャンプーは小屋に備え付けであります。

4)下界の情報や連絡方法:テレビとか見れるのですか?携帯電話はつながるの?

これまで働いてきた小屋はほとんど黒部原流域の小屋ばかりですが、意外にもテレビがないのは高天ヶ原山荘のみです。今は、発電機があって、衛星のアンテナさえあれば、衛星放送はどこでも映りますからね。お天気の情報なんかはやはりわかりやすいですし、最近はピンポイントの気象情報も衛星テレビで得られます。だいたいどこの小屋も談話室や玄関なんかにテレビを設置していて、お天気情報を流しっぱなしにしています。まあ、従業員はゆっくり見る暇はないですけど、オリンピックとかワールドカップとかの結果は、やはりみんな登山中でも気になっているようです。携帯に関しては、山岳エリアの電波基地等、だいぶ改善されてきてはいるようです。たとえば、太郎平小屋は、最近は普通にドコモの携帯は使えますし、双六小屋、黒部五郎小舎あたりでも、ちょっと裏山に登ったりすると通じる場所があったりします。裏山にメールしに行く人に自分の携帯をわたして、一緒にメール受信してきてもらったりとかはバイト同士で日常的にやっています。なので、これはキャリアによっても違いますし(たいていは山ではドコモが一番通じやすいですが・・・)、あらかじめ確認するしかないでしょう。どうしても、連絡を密にとらないといけないなら、開発の進んだ立山方面の小屋とか、基地局のある常念岳や槍ヶ岳あたりの小屋にするという選択もあります。電波の届かないところでは、緊急の場合は、小屋の無線で下界の事務所に連絡してもらい、かわりに連絡とってもらわないといけません。その点、大きな小屋ならば、たいてい衛星電話がありますので、それを使わせてもらえるので安心です。

その他

その他、ご質問等ございましたら、気軽にコメント欄に書き込んでいただければ、「虎の巻」のほうに順次書き込む予定です。

今日の写真は、ここ4年程山小屋のバイトの時には必ず持っていっている防寒着。ダウンのベストの上にのっかっているのが、ノースフェイスの同じアコンカグアシリーズの長袖のダウン。軽量で暖かいので重宝してます。山小屋での気温っていうのも、初めてこられる方にはわからないことの一つになるかと思いますが、北アルプスの稜線上の小屋だと、だいたい標高2400メートル以上の所にあるので、一般的な計算で標高100mごとに0.6度気温が下がるとすると、標高0メートルの所より、小屋は15度程度気温が低いことになります。都会の様にヒートアイランド化はしていないですし、放射冷却も厳しいので、暖かくなる海の日あたりから、お盆まででも、気温は冷え込むと朝は5度くらいまで下がります。また、八月上旬でお天気がよければ、昼間は20度くらいまで上昇することもあります。ただ、低気圧が来て、しとしと雨が続いたりすると夏とはいえ日中も気温が低いままで、最高気温10度程度のこともありますので、下界の真冬並みです。なので、フリースの上に羽織る何がしかの防寒着は持っていったほうがいいです。7月上旬やお盆過ぎはさらに冷え込み、当然、夏なのにストーブなしでは暮らせません。